【十の瞳】
十二愛は、コロを見ずに言った。
「コロ、私たち、応接室に、行かなくちゃ……」
コロは、十二愛に手を伸ばしかけてやめる。
彼女の、ほどけかけた髪に触れようとして、思いとどまり、手を下ろした。
「……犯人が、分かったの」
重い空気が流れた。
コロは何も言わない。
十二愛も、ここで知らせるべきことはすでに告げた。
やがて息苦しさに耐えかねて、十二愛はそっとコロの様子を窺った。
それに気づいたコロは驚くそぶりも見せず、ただ静かに微笑むと、
「そっか……」
ゆっくりと頷いてみせた。
その、コロの態度のやわらかさに、十二愛は途轍もない罪悪感と不安に襲われる。
死刑執行人のような気持ちで、彼女は断言した。