【十の瞳】



応接室には、全員が揃っていた。


雑然としていた応接室は、荷物が端に追いやられ、ある程度の落ち着きを取り戻していた。


ファニーペイン辺りが片づけたのだろう。


つまり、もう準備は整っているという意味だ。


十二愛に続いて僕が部屋に足を踏み入れると、背後で扉が閉められた。

逃げ出すつもりはなかった。


十二愛にバレてしまえば、終わりだったからだ。


これは、そういうルールで動く悪夢だった。

なんだか、肌寒いような気さえした。



「……いかがですか」


「いえ、結構です」
 


コロはタキさんに勧められたコーヒーを断り、ソファーに深く腰掛ける。


体が柔らかく沈み込む感覚に、この布の下は奈落なのではないかと邪推した。



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