【十の瞳】
中には睨みを利かせた、危ない眼差しの奴もいた。
今にも「お前らは敵だ」と言い出しそうなくらい。
バスは市街地を離れて走り、走り、やがて周りは田んぼか畑だけかと思っているうちに風景から民家が消え、
山の中に入り、谷を越え、不安になるくらいの砂利道を走り、日が暮れる頃になってやっと、一つの館の前に到着した。
それは、古めかしい洋館だった。
雨が降り出したため、あまりよくは観察できなかったが、
一言で表現すると、明治か大正の頃に建てられた屋敷、というような感じだった。
広いし、洒落たデザインの建築ではあるけど、あちこちの規格が小さかったり、古ぼけたりしている。
全員の自己紹介は、それぞれあてがわれた部屋に荷物を置いてからとなった。