Art White Hair 桜通り店
前に進むための、
縁っていうものは、予想外にもろく切れやすいものらしい。
都会の空気の排気ガスっぽい臭いを嗅ぎながら、零れそうな涙をなんとか止める。
フラフラとオフィス街を歩く私を、道行く人が怪訝そうに見る。
でもそんなこと気にしてられない。
みんなはこれから帰る会社があるだろうけど、私にはもう無いのだから。

4年働いた会社だった。
契約だったけど、毎年のように今年も更新してくれるものだと勝手に思っていた。
急に宣告されたクビに、付き合ってる彼に「ありえないよね」なんてメールしたら

『無職の女なんてありえない』

って返信が一言届いた。
ありえないのは、私のほうだったらしい。

実家に連絡すれば、
高卒で契約社員なんてしてるからだ。
正社員の職を探さずに一体なんのために都会に出たんだ。
いままで何をしていたんだ。
頭の中で飛び交う文句たち。
安易に想像できて連絡ができなかった。

かといって誰もいない家に戻る気分でもない。
誰かに話したいけれど、平日の午前中に暇な友人なんていない。
行くあてもなく、通いなれたこの道を歩く。

なんとかして前に進まなきゃと自分に言い聞かすように。
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