今日降る雨、明日吹く風
一章 〜男〜
『なんでそうなんだよ!?』
『なんで?あなたまだ分からないの!?』
『何も言わないで分かるわけないだろ!』
『だからあなたは昔から変わらないのよ!もう疲れたの…さよなら』
バタン
女は濡れた頬を拭いもせずドアを思い切り閉めて出て行った
「ふんっ、あんな女がいなくたって何も困りはしない、こんな時間に出て行って…むしろ困るのは"アイツ"の方だ」
そう男は強く閉められたドアに向かい 心の中で叫んだ
ピリリン♪ 2時だよ ピリリン♪ 2時だよ………
男の耳についたのは 2人で選んで買った 置き時計の"声"だった
時計は喋るだけでなく 半身をスライドさせる事ができ 中に鍵を置けるようになっているお洒落な時計で 付き合い始めて1年目の記念に買った物だ
男は雑にその時計を掴み
『これも持っていきやがれ!!!』
ガシャーン
時計は玄関のドアに打たれ 床一面に散らばった―――