モノクローム
第一章
転校と友達
「これからよろしくお願いします」
「最初は大変かと思うけど、頑張ってくださいね」
頭を下げて、私は後ろにあったドアから理事長室を出た。
「はぁ……」
6月。
私は明日から、ここ、日笠(ひがさ)高校に通う。
紺色のブレザーとプリーツスカート。少しくすんだ赤のネクタイ。白のカッターシャツ。
この学校の制服は可もなく不可もなく。まさに妥当だった。
下調べしたとおり、学校は悲惨だった。
ゴミだらけの廊下。ヒビが入った沢山の窓。破かれた掲示板のチラシ。柱が少しくずれていたりもしている。
「まぁ、綺麗すぎるよりかはいいかな」
ちょっとぐらい荒れてたほうが自分にあってる。
比較的綺麗な理事長室を背に、私は足を進めた。今日は理事長先生に説明をうけるだけで終わり。
早く帰って、新しい家に運んだ段ボールを片付けなきゃ。
「だるいなぁ」
「どーしたのっ?」
「んん!?」
一人で歩いていたと思ったら、隣にどこぞの中学生が迷い込んでいたらしい。それにしちゃちょっとチャラいが。
「見ない顔だねぇ。転校生?」
「そういう君は? ここは高校だよ」
「僕は高校生だーっ!」
「おお、それはすみませんでした」
握り締めた両手を真っすぐ上にのばし、ぷんぷんといった効果音が似合いそうな顔つきで怒ってきた。
.
< 1 / 58 >