リアル




待つこと一時間程で、隆の前には料理が並べられた。


どれも簡単に見えて手が込んでいるようにも見える。


「鍋一個だから、大したもん作れないし、時間もかかったけどな」


生野は隆に割り箸を渡しながら言った。


「あの……」


「よかったよ、調味料とかも買ってきて。ないだろうな、と思ったんだよ」


生野は隆の発言に気付かずに喋った。


「にしても、全く料理しないんだな」


「あの、何で?」


隆は割り箸を割る前に料理を指差した。


何故、生野が自分に料理を作ってくれるのかが分からない。


「俺、料理得意なんだけどさ、作る機会ないんだよ。彼女も料理得意だし、食べさせる相手が欲しくてさ」


答えなようで答えになっていない。


隆はそう思いながらも空腹を感じる胃に生野の手料理を入れていった。


どれもこれも美味しく、箸が進む。


「普段、まともなもん食べてないんだろ?」


生野も料理に箸をつけながら言った。


「まあ……」


まともなものなんて、施設を出て以来口にしていない。


外食はまともな食事と言えるかどうかは微妙なところだ。


いや、今日の昼に食べたのはまともなものに入るだろうか。


隆は考えながらも食事を進めた。



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