リアル
だから、こうして思い出さなくてはならない場面に直した時、何の言葉も出てこないのだ。
口が固まり、頭も正常に働かない。
思い出すことを拒否しているのだ。
あの日の出来事を。
「あ……いや、悪い。話したくないよな」
隆はばつが悪そうに顔をしかめた。
いや、隆が謝ることではない。
何時までも逃げて、あわよくば自分が悪かったのではないと思いたい自分がいけないのだ。
いい加減向き合わなくては。
薫はゆっくりと口を開いた。
「……あれは、私がようやく刑事としてましになってきた頃だったわ」
薫の言葉に隆は目を細めた。
さらさらとした髪は夕陽で金髪にも見える。
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