リアル
「仲がいいんですね」
美緒は薫に視線を戻して言った。
「早くに両親が亡くなって、二人きりの家族だから。でも、この子ってば、私の苦労なんて何一つ知らずに、まだフリーターなのよ」
薫は困っちゃうでしょ? と付け加えて肩をすくませた。
幾ら作り話とはいえ、自分が不甲斐ないと言われるのはいい気分ではない。
隆は演技ではない不貞腐れた顔で水を飲んだ。
だがそれが功を奏したのか、美緒がくすりと笑った。
「美緒さんは、ご実家が歯科医院なの?」
薫は更に質問を重ねる。
だが、美緒はそれをただの世間話だと思っているのか、躊躇うことなく答えていった。
「実家は、祖父の代からの総合病院です」
「普通のお医者様にはなろうと思わなかったの?」
薫の質問に、美緒はええ、と頷いた。
美緒の実家が何であるかなど、生野がとうに調べている。
なので、あくまで長く話を聞き出す為なのだろう。
隆は若干のつまらなさを感じていた。
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