リアル




可愛い看板の店を見付けたから、今度一緒に行こう。


美咲は携帯電話で撮った写真を薫に見せながらそう言ってきたのだ。


こんな場所にあったなんて。


薫は店のドアを開けながら思った。


この町に住み始めて短くはないが、商店街に足を運ぶことはなかった。


買い物など殆どしないし、食事はパート先の余り物で十分足りる。


だからアパートから近いにも関わらず、この商店街に来たことはなかった。


しかし、美咲は何故こんなところに来ていたのだろう。


実家からは随分と離れているというのに。


そもそも、美咲はあまり遠出するタイプではない。


「いらっしゃいませ」


ドアをくぐると、可愛い女性店員の声がした。


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