リアル
リアル9
隆は大きな欠伸をした。
今日はバイトも休みだし、薫がパートの為、外に出向くこともない。
何の予定もない日は久し振りだ。
ほっとしながらも寂しさを感じた。
事件の真相に近付くことが出来ないからか、それとも、薫に会うことが出来ないからか。
薫はこの真上の部屋に住んでいる。
そして同じように家族を殺された過去を持っている。
こんな近くに住み、胸の内を共有出来るにも関わらずその距離は遠く感じる。
それは、この心に潜む殺意のせいだろう。
いつか、この手を真っ赤に染めるであろう日が来るから。
否、いつかこの手を真っ赤に染めたいと願っているから。
馬鹿だな。
隆は布団の中で苦笑した。
何で、誰かを、薫を想ってしまっているのだ。
阿呆らしい。
誰かを想うなど、馬鹿馬鹿しくて、自分に掛ける言葉もない。
誰とも親しくならないと決めていたのに。
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