リアル
人を好きになるという感情は生まれて初めてのもので、何とも言えない感覚だった。
胸の底から沸き上がるような熱いもの。
そしてそれは冷たくもる。
自分では手に追えないそれは、どんなに食い止めようとしても膨らんでいき、胸全体を支配する。
消しても消しても、浮かんでくる感触。
胸が熱くなれば涙が溢れそうになり、胸が冷たくなれば心臓を握り潰してしまいたくなる。
こんな感情は知る必要はなかった。
関わらなければよかった。
どんなに事件に近付けないとしても、関わるべきではなかった。
揺らぐ決心を固定するのはあまりにも辛すぎるから。
隆は枕を握り締め、顔を突っ伏した。
溢れ出る涙は外には出さず、全てを布に吸い込ませてしまう為だ。
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