リアル
リアル11
いつの間にか隆の腕の力は抜けていた。
それと同時に泣き止んでいることにも気付いた。
だが背中に回した腕をほどくことは出来なかった。
首筋に顔を埋めたまま、隆はぴくりとも動かない。
時々、唾液を飲み込む時に唇が動きその隙間から息が漏れる。
「……何か、あったの?」
薫は隆の肩甲骨に指を這わせながら静かな声で尋ねた。
「…………ん」
隆は小さな声でそれだけ答えた。
答えたくないのか、それともまだ気持ちの整理がついていないのか。
薫は隆の背を優しく撫でた。
男が腕の中にいるなど、何年振りのことだろう。
隆は子供扱いされるのを嫌がってか、小さく身を捩った。
隆の膝が腕に当たった。
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