リアル
薫はそれで隆の背を撫でるのを止めた。
すると隆はすぐにまた大人しくなった。
「話せる?」
「…………ん」
隆はまた同じ返答をした。
そして、ゆっくりと自分から身体を離した。
触れ合っていた部分が急激に寒くなったように思えた。
今更ながら、鼓動が早くなっていることに気付いた。
ガキじゃあるまいし。
薫はそう思いながら胸を撫でた。
これはちょっと驚いただなのだ。
「……会ったんだ」
隆は俯いたままぼそりと呟いた。
「誰に?」
頭を抱える隆は小さな子供のようにも見えた。
「父さんと母さんを殺した奴に」
隆の言葉に薫は目を見開いた。
まさか……ということは。
薫は隆の手に目をやった。
そこには汚れなどない、綺麗な指があった。
「……それで?」
薫は恐る恐る先を促した。
場合によっては生野に連絡をしなくてはいけない。
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