リアル




「追い掛け、られなかったんだ」


隆はそう言って身体を震わした。


「え……?」


「あいつだって、分かったのに、身体が動かなかったんだよ」


隆は涙を溢した。


「あんなに……あんなに誓ったのに」


薫は身体を震わす隆にそっと腕を伸ばした。


自分も同じだった。


殺してやる、と確かに思ったのに、引き金を引くことは出来なかった。


一瞬にして迷いが生じたのだ。


殺してはいけない。


道徳が憎しみを支配したのだ。


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