リアル
「殺してやりたい」ではなかった。
「殺す」。
明確な感情は、身体の内側から沸き上がり、手足の先を熱くした。
だが、心だけは反対に急激に冷めていったのだ。
それは、自分のせいだという感情が残っていったからだろう。
目の前で輝かしい将来を絶たれた妹の亡骸は自分が産み出してしまったのだ。
いつも笑顔を絶やさず、心優しかった妹は、自分のせいで殺された。
その感情だけはしっかりと残っていた。
そのお陰か、憎しみの中に悔しさが混じったのだ。
薫は棚に置かれた写真立てに手を伸ばした。
そこには、まだ若い薫と、華やかな笑顔をした女性が写っている。
まだあどけなさの残る可愛らしい顔立ちをした女性だ。
「……ごめんね、美咲」
薫は写真立てを胸に抱き、涙を浮かべた。
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