リアル
リアル3
隆は一人の部屋で息をついた。
予想外であって、予想以上の展開だ。
本当は過去の話などするつもりはなかった。
だが、薫の部屋にあった写真を見た時、話さなくてはいけないと思った。
自分の手の内を明かしてもいいと思えたのだ。
明るく笑う美しい姉妹。
その笑顔は今の薫にはなかった。
隆は手元の写真に視線を落とした。
両親が殺される一週間前に撮った写真だ。
日曜日に家族三人で出掛けた公園で、近くにいた若い男に頼んで撮ってもらった写真。
幸せそうに笑う三人は、この一週間後に悲劇を迎えることなど露程も知らなかった。
このまま幸せな時間はいつまでも続くと思っていた。
あの写真の中の二人も同じだったのだろう。
今も蘇る記憶は真っ赤に染まった景色だ。
真っ赤に染まった景色に浮かび上がる黒はタトゥーの色だ。
両親を包丁で刺す男はニット帽を目深に被り、マスクをしていた。
だけれど、首が出ていた。
そしてそこには、龍をナイフが貫いたタトゥーがあったのだ。
幼い隆は、刺される両親の姿を見ていられず、ずっとその模様を見ていた。
だからそのタトゥーは確りと脳にインプットされているのだ。
そして忘れることは出来ない。
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