リアル
「お帰りなさい」
ぱたぱたと走る音が耳に届く。
「京華、来てたのか」
生野は足音の主の名を呼んだ。
「正確に言うと、昨夜泊まったの」
京華と呼ばれた若い娘はへへ、と笑った。
長い髪を栗色に染め、それを頭の高い位置で結い上げた可愛い娘だ。
大きな瞳が小型犬を思わせる。
彼女、藤巻京華は生野の恋人だ。
歳は生野とは十一離れている。
「母さんは?」
「寝てるよ」
京華は押さえ目の声で答えた。
京華と知り合ったのは二年と半年程前だ。
たまたま事件の張り込みに使っていたカフェ「ミルフ」の店員だった京華が生野に一目惚れし、猛烈にアタックしてきたのだ。
それから半年後、二人は恋人同士になった。
二年の歳月が経とうと、京華の積極さは少しも変わっていない。
.