リアル
「……腹減った」
隆がぼそりと呟いた言葉を薫は聞き逃さなかった。
「何か食べに行く?」
薫が訊くと、隆は顔を少しだけ綻ばせた。
それを見て、直ぐに薫は足の向きを変えた。
殆ど外食をすることはないので、この辺りにどんな店があるのかは分からない。
だが、駅前に出れば店は幾らでもあるだろう。
そこから適当に選べばいい。
薫はそう考えながら歩道に出た。
真上に昇った陽が眩しい。
歩道に出来た影は二つ並んでいる。
.