リアル
リアル5
とんとん、という音で隆は我に返った。
遥か昔の記憶だ。
忘れたくとも忘れられるわけはないし、忘れるつもりもない。
何時までも抱えていなくてはならない記憶なのだ。
十五年前のあの日、両親が目の前で殺された日の記憶。
再び扉が叩かれた。
薫だろうかと思いながら、隆は玄関に近付いた。
鍵を開けようとしたが施錠し忘れていることに直ぐに気付いた。
まあ、男の独り暮らしで危ないことなどそうそうない。
いや、あるのが今の世の中だ。
現に、家族三人が揃っているにも拘わらず襲われたのだ。
「はい」
だが隆は大した警戒心を抱かずに扉を開けた。
すると、そこには思いもよらない人物がいた。
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