∮ファースト・ラブ∮

「……紀美子……お前……」

「何よ!?

そんな哀れそうにあたしを見ないでよ!!



久遠を好きなのはあたしの勝手だし、

こんな想いを抱えてるのもあたしの勝手なんだから!!」





ぎゅう。



あたしはまた、紀美子先輩に強く抱きしめられていた。




その行動は、同情の眼差しを向けてくる葛野先輩に、

紀美子先輩は悲しみを紛らわしているんだってわかった。




だから、あたしも紀美子先輩の背中に腕をまわした。


大丈夫だよ。

麻生先輩は、きっと立ち直る。


そういう思いを込めて…………。







でも、紀美子先輩は、どうしてあたしにここまでしたんだろう?


あたしなんて麻生先輩にとっては、ただの暇つぶしの人形みたいなものだと思う。



この言い方だと、麻生先輩があたしを好きだっていうニュアンスになる。

おかしいよ。


だって、あたしは麻生先輩に抱かれない。

そういう対象すらもないんだ。



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