∮ファースト・ラブ∮

そして…………とうとう、葛野先輩と紀美子先輩が見えなくなる。


薄暗い、狭い通路に引きずり込まれてしまった。

それと共に、口の束縛は解放される。


だけど、その代わりにあたしの体が自由を奪われてしまう。

誰かの両腕があたしのお腹にまわっている。



後ろから誰かに拘束されてしまったんだ。



「やだ!!

はなして!!


やっ!!」



あたしは必死になって体を捩って誰かの腕を解こうとする。

でも、あたしを拘束している腕はとっても強い。

びくともしないんだ。



あたし……これから、どうなっちゃうんだろ……。


暴力ふられるのかな?

殺されちゃうのかな?




やだよ……。

だって……だって……まだ……まだ消えたくない。



消えたくなんて……ないよ……。


もっと……あと、あと少し……あと少しだけ……。


麻生先輩の側にいたい。


いたいのに…………。




「あそう……せんぱ……ふぇ…………」


そう思ったら、涙が溢れてくる。



悲しみが広がってくる。


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