∮ファースト・ラブ∮

いったい今、彼女はどんな顔をしているんだろう。

いや、予想はつく。

予想はつくが……彼女の顔を見てみたい。

おそらくは、大きな目をいったりきたりさせていることだろう。


この対処方法は至って簡単だ。

彼女を放せばいい。



だが、彼女から離れたくはない。

腕の中にまだ、いて欲しい。



彼女のあたたかな体温を感じていたい。





ぼくは彼女の表情を見たくて顎を掬(すく)った。

体は後ろに反れ、彼女の顔は必然的に俺を見上げる形になる。



美しい瞳が俺の目とぶつかり合う……かと思えば、

彼女の目はやはり左右に忙しなく揺れている。







……かわいい。







小動物のようだ。




「せ、せんぱ……あの……」

「何?」

いったい、何度目の言葉だろう。


繰り返し行われる会話に、ふと、笑みがこぼれてしまう。


すると、彼女の瞳はぼくを捕らえる。



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