∮ファースト・ラブ∮
毎週月曜日に行われる全学年がグラウンドで集まり、校長先生の話を聞く朝礼が終わった直後。
外靴から上履きに履き替える靴箱で、彼の声が間近に聞こえた。
「なあ久遠、お前、最近女子の趣味変わった?」
その言葉は、怒りを含んでいたものだった。
それは忘れもしない。
尚吾の声だ。
言葉を聞いた直後に振り返れば、人で溢れていた。
尚吾の姿は…………なかった。
『なあ久遠、お前、最近女子の趣味変わった?』
尚吾の声がぼくを打ちのめしてくる。
突然、ぞくりと背筋が凍った。
視線を感じて再び振り返れば……靴箱の曲がり角で、尚吾がこちらを向いてにたりと薄ら笑いを浮かべていた。
まさか……まさか…………。