∮ファースト・ラブ∮

毎週月曜日に行われる全学年がグラウンドで集まり、校長先生の話を聞く朝礼が終わった直後。



外靴から上履きに履き替える靴箱で、彼の声が間近に聞こえた。


「なあ久遠、お前、最近女子の趣味変わった?」

その言葉は、怒りを含んでいたものだった。



それは忘れもしない。

尚吾の声だ。



言葉を聞いた直後に振り返れば、人で溢れていた。

尚吾の姿は…………なかった。







『なあ久遠、お前、最近女子の趣味変わった?』






尚吾の声がぼくを打ちのめしてくる。


突然、ぞくりと背筋が凍った。


視線を感じて再び振り返れば……靴箱の曲がり角で、尚吾がこちらを向いてにたりと薄ら笑いを浮かべていた。




まさか……まさか…………。





< 129 / 278 >

この作品をシェア

pagetop