∮ファースト・ラブ∮
すると、尚吾はゆっくりとした足取りで廊下に向かって歩いていく。
まるで、ぼくを案内しているような速度だった。
急いで後を追えば……尚吾の足がある場所で止まる。
そこは1年6組の教室だ。
もう少し先に行けば、手鞠ちゃんのクラスに当たる。
いやな予感にさいなまれる中、ぼくは尚吾から一定の距離を保つ。
今、尚吾に近づけば、それこそ彼のいいように展開することは知っていたからだ。
尚吾は、ぼくのそんな姿を知っているのか知らないのか……真っ直ぐ前を見据えていた。
彼が見つめる先…………。
そこには……手鞠ちゃんがいた。
まさか……まさか……。
尚吾は手鞠ちゃんに目をつけたのか?
馬鹿な!!
尚吾に気づかれないよう、他の女子と同じ接し方をしていた……ハズだ。
すっぱい胃液が口の中に広がってくる。
体は金縛りにあったように動かなくなる。
どうする?
どうすればいい?
必死に自分に問う。
答えが必ず見つかると信じて……。