∮ファースト・ラブ∮

握りしめる両手は痺れ、感覚さえもなくなっていく。


今、ぼくは立っているのだろうか、それとも座っているのだろうか。


その感覚さえも麻痺(まひ)してくる。







朝礼が終わった今、大勢の学生が行き来している。


尚吾もまさか、こんなところで手鞠ちゃんに手を出すことはしないだろう。




緊迫した空気の中、誰かがぼくの肩に触れた。


後悔したのは、その後のことだ。

尚吾から目を離すんじゃなかった……と。




「く~おん!!」


いきなり肩をたたかれて驚いたぼくは、思わず振り向いてしまった。

そこには、ショートカットの女子が居た。


顔は……知っているような気がする。

だが、名前は出てこない。



誰だったか。



ぼくは眉根を寄せていると、女子は上目遣いで見つめてくる。


自分が美人だと知っているようだ。



そこら辺の男子なら、その姿は効果的だろう。

だが、今のぼくは…………。



声をかけてきた彼女から視線をはずし、尚吾が居た場所を視界に入れる。



「!!」


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