∮ファースト・ラブ∮


しまった!!

尚吾がいない!!




手鞠ちゃんは?



そう思って目を凝らしても、彼女さえも居なかった。



…………そんな。

嘘だろう?




心臓は何度も大きく鼓動を繰り返している。

まるで、これから手鞠ちゃんに起こる出来事を非難しているようだ。




「ねぇ、久遠……これからどこか行かない?」


そんな胸の内を知らない女子は、体を預けてくる。


両手を、恐怖で冷えきったぼくの腰に巻きつけ、何やらねだってきている。



だが、今のぼくはそれどころではない。






ぼくは彼女を振り切り、尚吾がいた場所へと移動した。



どこだ?

尚吾はどこへ行った?



手鞠ちゃんと一緒なのか?





唇を噛みしめ、尚吾の姿を探す。







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