∮ファースト・ラブ∮
∮***悲しみを超えて**決意とさようならをあなたに。
∮***
Side:
.+*麻生 久遠*+.
.+*Kuon asou*+.
「ん……お願い……久遠(くおん)……ねぇ……」
視聴覚室に不似合いなほどの声は、ぼくの下敷きになっている彼女から聞こえた。
彼女とは、ホームルームが終わったぼくが教室を出た時に出くわした女子で、名前は知らない。
だが、彼女の方はぼくを知っているようだ。
ぼくに近づいて来るなり、胸を押し付けてきた。
顔は美人のようだが、はっきり言ってぼくの趣味ではない。
彼女をここに……手鞠(てまり)ちゃんを呼び出すここに連れて来たのは、
手鞠ちゃんと別れるための……幻滅してもらうための行為だったことにすぎない。
手鞠ちゃん…………。
大きな瞳がぼくの袖を掴んで見つめてきた彼女は……もうこの場所にはいない。
ぼくが……目の前でこの女を抱いているから。
「やっ!!
止めないで!!」
ぼくの下敷きになっている彼女は、パックリと開いたカッターシャツへと自らぼくの手を誘っていく。
足をぼくの腰に巻きつけ、ねだってくる。