∮ファースト・ラブ∮
手鞠ちゃんを振って、傷つけて……。
挙句の果てに女性に殴られて……。
「はは…………。
馬鹿じゃん…………」
痛む右頬を押さえながら、自分の姿に惨めさが増す。
乾いた笑いしかだせない。
手鞠ちゃんといた……あの時の笑い方なんて……忘れてしまった。
「本当にね。
あんた、馬鹿よ」
静かな声が後ろから聞こえた。
それが誰だかわかったから、振り向きはしない。
「ねぇ、久遠、あたしはさ、あんたが何をしたのか見当ついてるし、
どう思っての行動かもわかってるつもり……」
そう言って、彼女はぼくの目の前に立った。
鋭い眼差しがぼくの無様な姿を映し出す。
「だけどね、手鞠ちゃんを……あんなに泣かせた久遠、あんたを……。
あたしは許せないね!!」
「……こうするしか、なかった。
ぼくでは……手鞠ちゃんを守れない」
紀美子(きみこ)と視線を合わすことができず、
床に目を置けば、襟元をぐいっと持ち上げられた。
必然的に紀美子の強固な目とぼくの目が重なる。