∮ファースト・ラブ∮
そうだ。
手鞠ちゃんは強い。
紀美子に呼び出しをくらった時だって対等に向かい合っていた。
「手鞠ちゃん」
彼女の名前を口から滑り出せば、胸が張り裂けそうに痛み出す。
「尚吾なんて怖くない!!
恐れるのは……そうじゃないでしょう?
あんたが恐れるのは、手鞠ちゃんを失うことよ!!」
そう……紀美子の言う通りだ。
だが……もう遅い。
彼女をたくさん泣かした。
幻滅されただろう。
「紀美子……もういいんだ」
こんなぼくよりも、手鞠ちゃんには、もっとずっと、
ぼくに相応しい男性があらわれるだろう。
それに、今の尚吾はやはり危険だ。
彼女を隣に置くことはできない。
「これでいいんだ」
紀美子から視線を逸らし、告げた自らの言葉は鋭い凶器と化してぼくの心臓をえぐる。