∮ファースト・ラブ∮
尚吾さんに見つかればややこしいことになるからと、
紀美子先輩は、人目につかない場所を選んでくれた。
向かう途中、紀美子先輩は誰かにメールを打っていたみたいだった。
いったい誰に?
首をかしげて見つめたら、にっこり笑って誤魔化された。
裏庭のずっと奥……道がひらけた小高い丘にあたしたちはいた。
知らなかった……こんな見晴らしがいいところがあったなんて……。
たぶん、紀美子先輩は何回もここに来たことがあるんだろう。
我が物顔で案内してくれた。
そっと息を吸えば、緑の優しい匂いがした。
「あたしじゃダメでした」
あたしと紀美子先輩は、香織さんと向かい合った。
そして……ゆっくり……感情的にならないように……話していく……。
「麻生先輩は、今でも香織さんを想っています。
あなたは、麻生先輩のことを、どう思っていますか?」
心音が激しい鼓動を鳴らしている。
あたしは胸の前に握りこぶしをつくって話した。