∮ファースト・ラブ∮
麻生先輩を想ってるって答えてほしい。
お願いだから……。
自分のために、麻生先輩のために、どうか……どうか正直になって……。
その想いを胸にしまって、ぎゅっと唇を結ぶ。
「わたしは………。
尚吾がこわいのよ……少し男の人と話せば、顔色を変えてわたしを抱きしめてくるの……」
香織さんは、両手でギュッと自分の体を包んだ。
たぶん、その時のことを思い出しているんだろう。
顔が真っ青になっていた。
「わたしは、あなたのように、強くはないのよ。
だから……」
目を伏せる香織さん。
そんな中、今まで黙っていた紀美子さんが口をひらいた。
「ねぇ、なんか勘違いしてない?
強い人間なんて、この世にはいないんだよ?
手鞠ちゃんだって、こう見えて、とても傷ついてる。
だけどね、進まなきゃいけないんだよ?
苦しんで悲しんで……でもね、
あたしたちは、そうやって、前に進んでいくんだ」
紀美子先輩…………。