∮ファースト・ラブ∮
紀美子先輩の強い意志を、言霊(ことだま)から伝わってきたあたしは……少し……泣きそうになる。
だけど、今は泣いちゃだめ。
ここは泣く場所じゃない。
そう思って、うつむく香織さんと対峙する。
「あたし…………実は……ちょっとわけがあって、
6日後には、この場所から居なくなるんです」
ほんとうは、この場所から居なくなるんじゃなくて、消滅しちゃうんだけど、そんなことは言えない。
でも、これは本当。
だから、話し続ける。
言わなきゃ、あたしの想いは伝わらないと思ったから。
隣では、紀美子先輩が息を飲む音がした。
はじめてする話に、きっと驚いているんだろう。
誰にも言ってなかったもんね。
それに言える話じゃないしね…………。
「その前に……麻生先輩と思い出をつくれたらって……そう、思っていました」
消える前に、少しでも楽しい思い出をつくりたい。
遠くからこっそり見つめるんじゃなくて、麻生先輩と話したいって思った。
「でも……でも……それでもダメでした。
麻生先輩は、あたしなんて必要としていない」
麻生先輩は、いつだって香織さんを想っていた。