∮ファースト・ラブ∮
「なあ、久遠、お前、好きなんだろう?
手鞠ちゃんがさ!!
だから手を出さなかったんだろう?」
睦はぼくをこのままにしてはくれなかった。
ぼくの前に大股で立ちはだかり、力いっぱい両肩を掴む。
だが、言いたくなかった。
認めたくなかった。
手鞠ちゃんが今でも好きだと……女性をどんなに抱いたとしても、彼女を忘れられないなんて、認めたくなかった。
だから、睦から視線をはずし、俯(うつむ)く。
「お前わかってるか?
このままじゃ、お前、香織の二の舞だぞ?
なあ、久遠!!」
睦の両手が認めろと言わんばかりに体を揺さぶる。
「……たから、……っていうんだ」
睦の無情な言葉攻めに堪えきれず、胸の内を、とうとうさらけ出した。
「え?」
だが、睦はぼくの言葉をうまく聞き取れなかったようだ。
訊きかえして来た。
プツリ。
その瞬間、我慢していた何かが切れた。