∮ファースト・ラブ∮
あれから5日が過ぎた。
すべてが平和で、しかも穏やかな日常が続く。
尚吾(しょうご)と香織(かおり)はもちろんのこと、
手鞠(てまり)ちゃんからも離れたぼくは今、
教室の窓越しから昼休憩ではしゃぐ生徒がいるグラウンドを見つめていた。
尚吾と決別を果たした後も、ぼくは相変わらずな日常を送っていた。
ただ…………ぼくの胸にはぽっかりと穴が開いたような感覚が付きまとう。
その穴を埋めるべく、以前と同じように女性を抱こうとした。
だが……それは無理だった。
ぼくの脳裏に浮かぶのは手鞠ちゃんの笑顔ばかり――――。
ぼくにはもう、以前のような行動はとれなかった。
だから、必然的に女性との関係も薄れていく。
紀美子(きみこ)は、相変わらずやって来るが、
それでも身体の関係はなく、友人としてのものだった。
彼女が開口一番に話すのは、いつだって…………。
「で?
お前はこれでいいわけ?」
ぼくの隣で同じようにグラウンドを眺めていた睦(あつし)がぽつりと言った。
「何が?」
睦の言わんとしていることはわかっているが、
あえてしらばっくれていると、睦がふたたび口を開いた。
おそらく、紀美子と同じ内容だろう。