∮ファースト・ラブ∮
手鞠ちゃんを知ってから丁度一ヶ月が経ったその日の早朝。
ぼくはいつも通り、郵便受けから、たくさん入ったチラシ入りの新聞を持ち出す。
その中から、ひらりとぼくの手からすべり落ちた一通の手紙があった。
「?」
何だろう?
拾い上げて、あて先を見れば、家の住所は書いておらず、
ただ、かわいらしい文字で、ぼくの名前が記してあるだけ。
切手は貼っていなかったから、家に直接投函(とうかん)したんだろう。
…………差出人は?
「!!」
裏面を見た直後、ぼくの体は動かなくなってしまった。
「久遠(くおん)?」
「あ、ああ。
今行くよ」
母さんの声でようやく金縛りから解けたぼくの体は、台所へ向かう。
家族に新聞を手渡した後、すぐに自分の部屋へと入った。