∮ファースト・ラブ∮
4人掛けのテーブルのある8畳ほどの洋間へ、ぼくは通された。
ぼくの前には手鞠ちゃんのお父さん、綺羅さんが。
綺羅さんの隣には手鞠ちゃんのお母さん、百合さんがゆっくりと腰をおろした。
「単刀直入に訊こう。
わたしたちを見て、君はどう思う?」
綺羅さんは、ぼくを真っ直ぐ見つめて、そう問うた。
射抜くような目は、ぼくの心、感情をすべて見通そうとしているようで、
嘘などつけないことを物語っている。
「手鞠ちゃん……高校2年生の子供さんがいるわりには、
少し年齢が若いような気がします」
綺羅さんから目を逸らすことなく話せば、綺羅さんはコクリと頷(うなず)いた。
「今から話すことは、わたしたちの運命にも関わることだ。
もちろん手鞠に大きく関係することでね」
『手鞠』綺羅さんの言葉から彼女の名前が口から出ると、
ぼくの胃はムカつきを覚えた。
この家族…………。
どうやら手鞠ちゃんの家には……何か人に言えないような秘密があるようだ。
「君がここまで来てくれたということは、
少なくとも手鞠に想いを抱いてくれていると思ってもいいのかな?」
テーブルに肘をつき、ぼくと同じ目線になって話す綺羅さん。
「はい。
ぼくは彼女が好きです。
――――たとえ、彼女がぼくを嫌っていたとしても……」
そう口にすれば、胸が痛い。
苦しくなる。
口の中にすっぱいものが広がった。
だが、手鞠ちゃんに嫌われても仕方ないとも思う。
なにせ、ぼくは手鞠ちゃんを裏切るようなことばかりをしてきたのだから……。