∮ファースト・ラブ∮
「いいえ。
手鞠は、今もあなたが好きですよ?
だから……あなたには、わたしたちのことを理解してほしいと思ってる」
テーブルの上に置いているぼくの右手を、百合さんはそっと上から包み込んでくれた。
気持ちが少し、楽になる。
「わたしたちは……百合と手鞠は、人魚一族の生き残りなんだ」
「!!」
今……綺羅さんは、なんと言ったのだろうか?
ぼくは自分の耳を疑った。
『人魚』
だって、その生き物は空想の世界にいるものだ。
けっして、現実世界にいるものではない。
だが、冗談ではないようだ。
綺羅さんと百合さんの表情は、とても苦しそうだった。
「信じられない話だろう?
わたしも、百合からこのことを聞く前までは、
架空の存在でしかないと思っていたからね。
だが、君は違うだろう?
君は、人魚がこの世界に存在するということを知っているハズだ」
…………それはどういう意味だろう?
まるで、綺羅さんはぼくが人魚と会ったことがあると言っているようだ。
「………………?」
「思い出してほしい。
2年前の……猛暑だった夏の日のことを――――」