∮ファースト・ラブ∮
「消えたくない…………」
この世界から消えたくなんてない。
好きな人の隣にいたい。
あたしを産んでくれたママや、育ててくれたパパ……。
友達のあいちゃん。
紀美子(きみこ)先輩や葛野(くずの)先輩。
「もっと……」
麻生先輩の…………誰よりも大好きなあなたの…………
「となりに……いたかったよぉぉぉ……。
いたい……となりがいい。
消えたくなんかないよおおおおおおおおお!!
うええええええええええええん」
泣き声は広大な海の波の音によってかき消される。
誰も、あたしの声なんて聞こえない。
海に浸かっている魚になってしまったあたしの足から腰にかけて、少しずつ……透明になってきている。
もう、消える時間なんだ――――。
そう思ったら、さっきまでひっきりなしに出ていた涙が止まった。