∮ファースト・ラブ∮
「君を失いたくはない。
好きだよ。
君を……誰よりも愛おしく思う。
誰よりも、何よりも……だから……消えないで欲しい」
そう言って、麻生先輩はあたしの消えかけているほっぺを包んだ。
ゆっくり……ゆっくり……麻生先輩の顔が近づいてくる。
麻生先輩の息づかいがあたしのほっぺたをくすぐる。
キス…………してくれようとしてるんだ――――――。
……でも。
でも、もう…………。
あたしは、そっと目を閉じた。
やがて、やってくるだろう麻生先輩の唇が、あたしに落ちてくる感覚を思い出して――――。
でも―――――――。
その感覚は、やってこないのは知っていた。
「麻生せんぱい。
だいすき」
それは、口づけの代わりに言った言葉……。
…………お別れの挨拶。
あたしから麻生先輩の、最後の……『好き』っていう言葉……。