∮ファースト・ラブ∮
その日、手鞠ちゃんを失ってからのぼくは、やはり放心状態だった。
あれから、綺羅(きら)さんと百合(ゆり)さんに手鞠ちゃんが泡になって消えたことを話した。
綺羅さんと百合さんは……ぼくを責めはしなかった。
手鞠ちゃんが決めたことだからと、微笑んで「ありがとう」と言葉をかけられた。
違う。
ぼくは、礼を言われるようなことは、何一つとして手鞠ちゃんにしてあげていない。
礼を言うのは、むしろぼくの方で、
責め立てられて当たり前なのに……。
「ぼくは、手鞠ちゃんを見殺しにした」と言えば、綺羅さんは、静かに首を振った。
「手鞠は幸せだったんだよ。
君のような優しい男性に惹かれたんだから」
そう…………告げられた。
悲しんで当たり前なのに、綺羅さんも百合さんも、泣いてなどいなかった。
いや、泣いていただろう。
百合さんの頬には、涙の流れた跡があったから。
だが、少なくともぼくの前では泣いてはいなかった。