∮ファースト・ラブ∮

だから……ぼくではない他の誰かに手鞠ちゃんを渡そうと思ったんだ。



……本当は、自分以外の男に手鞠ちゃんを渡すなど、考えられないほど好きだったのに…………。





少し遅れて学校へ行けば、打ちひしがれたぼくの姿を見た睦(あつし)は心配してくれる。

何があったと尋ねてきた。


だが、理由など言えるはずがない。


『手鞠ちゃんを失った』などとは、言いたくはない。








ねぇ、手鞠ちゃん。


どこまでも未練たっぷりだと、君は笑うかな。


呆れられるかな。



それでもいい。


こんな惨(みじ)めなぼくを蔑(さげす)んでくれ。


こんな臆病なぼくを笑い飛ばしてほしい。




どんな姿でもいい。






――手鞠ちゃん。



もう一度……君に…………会いたいんだ。








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