∮ファースト・ラブ∮

「手鞠ちゃん…………」


彼女の名前を口にすれば、余計虚(むな)しくなるばかりだ。



悲しみに暮れていると、こちらへと向かってくる足音が聞こえてきた。


足音は大股だったから、男性だろう。



迷いもなくこちらへとやって来ることを考えると、どうやらぼくに何か話があるのだろう。







ぼくとある程度の距離まで近づいた足音は……静かに止まる。







振り向き、やって来た人物を見やれば、

ぼくが察したとおり、足音の主は男性のものだった。




彼は色素の薄い、肩まである髪を潮騒に揺らしている。


年の頃なら、大学生くらいだろうか。

背はぼくと同じくらいだろう。


目鼻立ちがはっきりとした、中性的な顔立ちをしていた。


そして、どこか陰のある雰囲気を纏(まと)っている。





ぼくは、おもむろに男性の顔から目線を少し下へと向けた。

「…………!!」


直後、ぼくの息が……心臓が……止まった。




彼の腕の中――――――――――。



そこには……………。







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