∮ファースト・ラブ∮
手鞠ちゃんは、見知らぬ男性の腕の中でぐったりしていた。
まるで、死んでいるかのような……そんな姿だった。
「手鞠ちゃん!!」
ぼくは男性に駆け寄り、男性の手から手鞠ちゃんを奪い取る。
…………手鞠ちゃん。
…………手鞠ちゃん。
細かい粒子の砂の上に跪(ひざまず)き、手鞠ちゃんの頬とぼくの頬をくっつける。
手鞠ちゃんの体温は…………とても冷たかった。
なぜ、こうも冷たいのかはわからないが、なんとか手鞠ちゃんの体温が戻るよう、
目を覚ましてくれるよう願い、きつく抱きしめる。
「体が消滅寸前だったからね。
実際、危なかったんだよ。
…………今は、少し安定してるかな?」
男性はぼくを見下ろし、静かに告げた。
男性の声は、消え入りそうな姿にも関わらず、以外にも意志の強い、芯の通った、揺らぎない声質をしていた。
「あなたは?」
手鞠ちゃんから視線を逸(そ)らすことなく、男性に問う。
逸らせば、また、彼女が消えてしまうと思ったからだ。