∮ファースト・ラブ∮
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Side:
.+*麻生 久遠*+.
.+*Kuon asou*+.
ぼくは今、手鞠(てまり)ちゃんの家にいる。
母さんには帰るのが遅くなると伝えた。
というのも、ぼくには少しひっかかることがあったからだ。
手鞠ちゃんが消滅寸前に出てきてくれた、あの……魔女の末裔という一族のことだ。
手鞠ちゃんは今、百合(ゆり)さんと夕食を作ってくれている。
ぼくは、夕食をこちらでいただくことになった。
その間、綺羅(きら)さんとぼくはテーブルを向かい合わせにして座っている。
だが、綺羅さんも魔女一族の話は知らないようだ。
もちろん、人魚一族の百合さんさえも知らないようで……。
「たしかに、彼は魔女一族の末裔と話したんだね」
「はい。
そのようです」
綺羅さんの問いに、ぼくは頷(うなず)いた。
「だが、俺も百合もその存在は知らないんだ」
「そう……ですか……。
もしかしたら、人魚一族にかけられた呪いを解く方法があるのかと思ったのですが……物事はそんなに甘くはありませんね」
苦笑したぼくに、綺羅さんは微笑んだ。
「だが、君には感謝しているよ。
手鞠が生きていたんだから……。
こうして親子三人で生活できることを嬉しく思う。
ありがとう」
綺羅さんはそう言うと、頭を深々と下げてきた。