∮ファースト・ラブ∮
ちらり。
目だけを先輩に移す。
先輩は、にっこり微笑んでいた。
……………ううう。
先輩、相変わらずカッコいいです。
漆黒の髪はそよ風に遊ばれて流れている。
目は少し細めでいつも微笑んでいるような印象を与える先輩。
背は185センチの長身で、細身。
なのに、強そうながっちりとした肩幅。
黒のブレザーはそんな先輩をさらに綺麗に見せている。
まるで、この世の全部が先輩を賞賛しているみたい。
そんな先輩には噂がある。
それは………………。
「華原 手鞠ちゃん……だっけ?」
先輩の鼻にかかった声があたしの心臓を痙攣(けいれん)させる。
「はい!!」
先輩に呼ばれても、恥ずかしくって顔なんて上げれやしない。
あたしの視線は相変わらず真下にある。
なんだけど……。
いきなり視線の先に大きくてごつごつした手が伸びてきた。
「?」
その手はあたしのほっぺたを包む。
………………あ。