∮ファースト・ラブ∮
「オレは葛野 睦(くずの あつし)麻生とは腐れ縁ってやつでな、友達やってる。
コイツ、女には見境ないけど、結構中身はいい奴なんだ」
知ってる。
先輩は、とっても優しいことくらい。
もう、知ってるよ。
だって、人魚のあたしを見ても、先輩は助けてくれた。
騒ぎ立てずに、そっとしておいてくれたんだから。
「失礼だな~。
ぼくは、そんなに見境なくなんてないよ」
麻生先輩は眉根を寄せて抗議していた。
もちろん、あたしの肩に顎を乗っけながら…………。
だから、あたしの耳元で麻生先輩の息が直接かかってくるわけで……。
その度にあたしの体はびくんと震えてしまうんだ。
「どうだかな。
手鞠ちゃん、コイツには気をつけろよ?
何かあったらいつでもオレを呼んでくれていいからな」
葛野先輩はあたしの頭に大きな手を乗っけてぽんぽん、って撫でた。