∮ファースト・ラブ∮
「いいんです。
今日は、葛野先輩にお話があって……お時間いいですか?」
訊ねれば、先輩は大きな目をさらに大きくさせて自分を指さす。
コクリ。
あたしが大きくうなずけば、葛野先輩は笑顔で応えてくれた。
「ここじゃ話しにくいだろ?
屋上いこうか」
屋上に続く人、一人がやっと通れるスペースの階段を上る。
小さな細い、錆(さ)びたドアを開ければ、真っ青な空が広がる世界があった。
さわさわと吹く風に気持ちよくなって目を閉じれば、
まるで自分が浮いているような感覚になる。
「それで?
話ってのは、やっぱ久遠のことかい?」
さっすが葛野先輩。
話がわかる!!
閉じていた目をそっとあけて葛野先輩と向かい合う。
緊張感が少し、漂った。
心臓がドクドクと、脈打っているのがわかる。
それは、麻生先輩と一緒にいた時のドキドキした、浮いた感覚じゃない。
心臓が鷲掴みにされたような、苦しい感覚だ。