∮ファースト・ラブ∮

1階にある、1年5組の教室まで駆け下りたオレと久遠は手鞠ちゃんの友達の子に声をかけた。


「え?

手鞠ですか?


麻生先輩のクラスに向かったと思いますけど……いませんか?」



とのことだった。


ええええ?

まさかまさかの行き違い?

こんな狭っこい学校でか?


「あ、あの……」


焦っていると、手鞠ちゃんの友達は整った眉を下げてオレと久遠の顔を交互に見つめてきた。


オレと久遠の態度が彼女を心配させたんだな。


「何でもないんだよ。

早く手鞠ちゃんに会いたくってね、

ここまで来てしまったんだ」


悟られたらまずいと思ったんだろう。

久遠は歯が浮くような科白(せりふ)を言いはじめる。



さっすが久遠くんだ。

オレには到底そんな言葉は言えんな。


< 97 / 278 >

この作品をシェア

pagetop