∮ファースト・ラブ∮

「そっか……残念だ。

ありがとう」


久遠はにっこり笑って彼女に背中を向けた。


ちらり、彼女を背中越しで見ると、久遠を睨(にら)んでいた。



どうやら、彼女は久遠が気に入らないらしい。

ま、そりゃそうだわな。


なんたって久遠は女タラシだもんな。




って、それどころじゃねぇわ!!


「久遠……紀美子……手鞠ちゃんに近づいちまった後なんかな~」

紀美子が、あんなかわいい手鞠ちゃんに暴力をふるうのかと思えば不安になって思わず訊ねてしまう。


「その可能性は高いかも知れない。

相手は紀美子だ。


派手な容姿だからすぐに見つかるだろう。

目撃者を探そう」


さっすが久遠。

いつでも冷静だな、おい。



オレと久遠は紀美子を目撃した人物がいないかを探した。





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